フィルターメディアのプレコーティングは、性能の一部向上を目的として、集塵機のフィルターメディアに多孔性粒子層を意図的に形成する方法です。次に述べる理由により、プリーツカートリッジフィルターにはフィルターメディアのプレコーティングが有効と見なされる場合がありますが、必ずしもすべての用途で適切な方法ではありません。

新しく清潔なフィルターメディアにプレコーティングが考慮されるのは、2つの基本的な理由があります。プレコーティングの使用を検討する前に、その特徴や影響を理解しておく必要があります。特に、単回のプレコーティング適用が一時的な対処に過ぎない場合があることも把握しておくべきです。

初期効率を高めるためのプレコーティング

フィルターメディアのプレコーティングは、性能の低いフィルターメディアの初期効率を高める手段として提案される場合があります。新品で未使用のセルロースまたはセルロースと合成繊維をブレンドしたフィルターメディアは、サブミクロン粒子での初期効率が30%程度しかないことがよくあります(ASHRAE 52.2試験に基づく)。フィルトレーション効率性能は、粉塵がメディアに付着する(捕集される)につれて徐々に向上しますが、プレコーティングすれば、この効率性能の向上を加速できます。プレコーティングはフィルターメディアの表面に粒子層を形成するためプレフィルターとして機能し、空気中のサブミクロンやその他の粒子を捕捉してフィルターメディアへの侵入を防止します。その結果、全体的なフィルター効率が向上します。

プレコーティングのサプライヤーは、通常、コーティング原材料の使用量を、カートリッジフィルターあたりわずか0.5ポンド(227グラム)からフィルターあたり最大2.5ポンド(1,134グラム)で提案します。フィルターをプレコーティングすると初期効率が向上しますが、プレコーティングの使用によって風量に対するフィルターの制限も高まることに注意してください。プレコーティングのタイプや量によってはフィルターの制限が非常に大きくなる場合があり、圧力損失が増大して空気の移動に要するエネルギーが大きくなることがあります。さらに、プレコーティングの使用による二次廃棄物の処理に伴うコストも生じます。

フィルトレーション効率を高めるためのフィルターメディアのプレコーティングは一時的な対策にすぎません。カートリッジ集塵機は、通常、フィルターメディアの表面に付着した「ダストケーキ」を圧縮空気のクリーニングパルスで定期的に除去してフィルターライフの長期化を実現しています。カートリッジのパルスクリーニングを行うと、捕集された粒子とプレコーティング原材料の両方が大量に払い落とされ、メディア表面から除去されます。プレコーティングで被覆されていたメディアも、何も処理していないフィルターメディアと同じ結果になります。フィルターメディアは、メディアに侵入して通過する微粒子にさらされるため、効率もそれに応じて調整されます。

フィルターライフを延ばすのためのプレコーティング

フィルターメディアの使用限界は、フィルターメディアを通過する圧力損失が空気流量を大きく制限するほど高くなる場合、または抵抗増加に対してファンを稼働するためのエネルギーコストが増大し、目詰まりしたフィルターのままファンを稼働し続けることが非現実的なレベルに達した場合に訪れます。プレコーティングによってフィルターライフが延びるという主張の裏にある一般理論は、プレコーティングがフィルターメディアの深部に侵入する微細粒子の量を最小化できる(メディアの目詰まりの進行速度を最小化できる)という想定によるものです。これは、プレコーティング原材料の塗布直後には合理的な想定かも知れません。プレコーティング原材料が実際のメディアに侵入する微細粒子に対するバリアとして働くためです。しかし、前述したように、フィルターメディアのパルスクリーニングがバリアを破壊し、パルスクリーニングのたびにプレコーティングが除去されるため、そのメリットも失われます。パルスクリーニングでプレコーティングが剥がれて失われると、未処理のフィルターと同じように捕集されるようになり、メディアの目詰まりに伴って動作圧力の損失が増大し始めます。図1を参照してください。

図1 図1

プレミアムグレードのフィルターメディアは、パルスクリーニングによってプレコート材が失われることで生じるろ過性能低下のリスクなしに、プレコーティングが提供するとされる高度なろ過特性を実現することができます。性能の向上については下記に説明します。

より優れたソリューション

プレミアムグレードのフィルターを利用すると、プレコーティングの欠点を避けることができます。プレミアムグレードフィルターは、ある種の恒久的表面処理を行ったもので、この処理によって粒子をメディア表面で捕集し、基材への粉塵ロードを防止します。最も一般的なタイプの表面処理には、直接塗布されたファインファイバー、メルトブローラミネーション、PTFE層などがあります。メルトブローン層でコーティングされたプレミアムグレードのフィルターは高い効率を提供しますが、サブミクロン粒子がメルトブローン層の内部(デプス)で捕集されることが多いため、パルスクリーニングが効果的に行えません。結果としてフィルター全体のライフが短くなってしまいます。PTFE コーティングフィルターも通常は高い効率を持ち、多くの状況でパルスクリーニングが効果的に行えますが、一般的に空気抵抗(圧力損失)が高い状態で稼働されるため、より多くのエネルギーを消費します。また、他のプレミアムグレードのフィルターよりもはるかに高額になります。ファインファイバーの表面層が直接塗布されたフィルターは、優れた効率とパルスクリーニングを効果的に提供します。さらに、比較的低い圧力損失で動作し、一般的に非常に費用効果も高くなっています。図2を参照してください。

 図2. Ultra-Web®クリーンメディア 図2. Ultra-Web®クリーンメディア
Ultra-Web®表面捕集メディア Ultra-Web®表面捕集メディア

プレミアムグレードの中では、ほとんどの場合、ファインファイバーフィルターが最良のオプションとなります。ファインファイバーを使用したプレミアムフィルターのメディアは、ファインファイバーの永続的な表面層を備えた基材(多くの場合、一般的なセルロースカートリッジメディアに類似)で構成されています。通常、この層の厚さは1ミクロン未満のため、目詰まりやデプス捕集は問題になりません。高品質のファインファイバーカートリッジのプレミアムファインファイバーは、通常直径0.3ミクロン以下のファインファイバーであり、フィルターメディアの表面に小さな細孔の恒久的なマトリックスを形成します。表面層のファイバーはサイズが非常に微細なため、空気抵抗の著しい増加はなく、初期の圧力損失が低く抑えられます。

より高い初期効率に重点を置く場合は、ファインファイバーフィルターが優れたオプションとなります。新品でクリーンなファインファイバーカートリッジの効率は、一般的なカートリッジに比べて大幅に高く、典型的なファインファイバーカートリッジはサブミクロン粒子に対して少なくとも 65% の効率を示すのに対し、汎用フィルターは初期効率で 30% に達することすら困難な場合があります。また、ファインファイバーフィルターは稼働開始後、効率が非常に速く向上します。ASHRAE 52.2のテストでは、1オンス(または28.35グラム)の粒子がファインファイバーカートリッジに供給された後、そのサブミクロンの効率が簡単に90%を超える可能性があることが示されています。

フィルターカートリッジの使用期間を延ばしたいユーザーにとっても、プレミアムグレードのファインファイバーフィルターは大きな利点をもたらします。稼働時、粉塵はファインファイバーメディアの表面に捕集されます。メディアがパルスクリーニングされると、ダストケーキのほとんどがメディアから払い落とされ、フィルターから除去されます。ファインファイバー層は無傷のままであり、デプス捕集や目詰まりから基材を継続的に保護します。デプス捕集はもはや重要ではないため、ファインファイバーカートリッジは、他のどのメディアオプションよりも低い動作圧力損失まで継続的にクリーニングし、大幅に長い期間の使用が可能になります。図3を参照してください。

図3 図3

最後に、プレミアムファインファイバーメディアの強化されたパルスクリーニング性能により、一般的なメディアフィルターに関連するデプス捕集を受けないため、クリーニングの必要性が低減され、フィルター全体の気流(圧力損失)に対する平均抵抗が低くなります。パルスクリーニングは頻度が少なくて済むため圧縮空気を節約でき、さらにプレミアムグレードのファインファイバーフィルターは低い平均動作圧力損失で動作します。このため、プレミアムファインファイバーメディアカートリッジを使用するとファンが動作中の動力を節約できます。動力の節約と圧縮空気の節約が合わさって、耐用年数全体を通して大幅なエネルギー節約になります。

プレミアムグレードのファインファイバーカートリッジが提供する長期間の使用、向上した効率、そして省エネルギー効果により、これらは一般的にプレコーティングよりもコスト効率の高いソリューションとなります。