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プレコーティングフィルターの長所と短所

ドナルドソントリット、フィルトレーションエンジニアリングマネージャー、Mark Belcher

フィルターのプレコーティングは、性能の一部向上を目的として、集塵機のフィルターメディアに多孔性粒子層を意図的に装填させる方法です。 以下のような理由でプリーツカートリッジフィルターにはプレコーティングが有効と見なされる場合がありますが、多くの用途では必ずしも最適とは言えません。

新しく清潔なフィルターメディアにプレコーティングが考慮されるのは、2つの基本的な理由があります。 プレコーティングの使用を検討する前に、プレコーティングの単独使用は暫定的な対策にすぎない可能性を含め、その違いや影響を理解しておく必要があります。

初期効率を高めるためのプレコーティング

プレコーティングは性能の低いフィルターメディアの初期効率を高める手段として提案される場合があります。 新品で未使用のセルロースまたはセルロースと合成繊維をブレンドしたフィルターメディアは、サブミクロン粒子での初期効率が30%程度しかないことがよくあります(ASHRAE 52.2試験に基づく)。 フィルトレーション効率性能は、粉塵がメディアに付着する(捕集される)につれて徐々に向上しますが、プレコーティングすれば、この効率性能の向上を加速できます。 プレコーティングはフィルターメディアの表面に粒子層を形成するためプレフィルターとして機能し、空気中のサブミクロンやその他の粒子を捕集してフィルターメディアへの侵入を防止します。その結果、全体的なフィルター効率が向上します。

プレコーティングのサプライヤーは、通常、コーティング原材料の使用量を、カートリッジフィルターあたりわずか0.5ポンド(227グラム)からフィルターあたり最大2.5ポンド(1,134グラム)で提案します。 フィルターをプレコーティングすると初期効率が向上しますが、プレコーティングの使用によって風量に対するフィルターの制限も高まることに注意してください。 プレコーティングのタイプや量によってはフィルターの制限が非常に大きくなる場合があり、圧力損失が増大して空気の移動に要するエネルギーが大きくなることがあります。 さらに、プレコーティングの使用による二次廃棄物の処理に伴うコストも生じます。

フィルトレーション効率を高めるためのフィルターメディアのプレコーティングは一時的な対策にすぎません。 カートリッジ集塵機は、通常、フィルターメディアの表面に付着した「ダストケーキ」を圧縮空気のクリーニングパルスで定期的に除去してフィルターの長寿命を実現しています。 カートリッジのパルスクリーニングを行うと、捕集された粒子とプレコーティング原材料の両方が大量に払い落とされ、メディア表面から除去されます。 プレコーティングで被覆されていたメディアも、何も処理していないフィルターメディアと同じ結果になります。 フィルターメディアは、メディアに侵入して通過する微粒子にさらされるため、効率もそれに応じて調整されます。

長寿命のためのプレコーティング

フィルターメディア全体の圧力損失が風量を大幅に制約するほど大きくなるか、増大した抵抗に対してファンを作動させるのに必要な電力コストが、目詰まりしたフィルターを交換せずにファンを稼働させ続けるのが不可能なレベルまで増大したら、フィルターメディアの寿命です。 プレコーティングによってフィルター寿命が延びるという主張の裏にある一般理論は、プレコーティングがフィルターメディアの深部に侵入する微細粒子の量を最小化できる(メディアの目詰まりの進行速度を最小化できる)という想定によるものです。 これは、プレコーティング原材料の塗布直後には合理的な想定かも知れません。プレコーティング原材料が実際のメディアに侵入する微細粒子に対するバリアとして働くためです。 しかし、前述したように、フィルターメディアのパルスクリーニングがバリアを破壊し、パルスクリーニングのたびにプレコーティングが除去されるため、そのメリットも失われます。 パルスクリーニングでプレコーティングが破壊され失われると、未処理のフィルターと同じように捕集されるようになり、メディアの目詰りに伴って動作圧力の損失が増大し始めます。図1を参照してください。

図1

プレミアムグレードのフィルターメディアは、プレコーティングが保証する高いフィルトレーション特性を提供し、パルスクリーニング中のプレコーティング原材料の損失に起因するフィルトレーション性能の損失もありません。 性能の向上については下記に説明します。

より優れたソリューション

プレミアムグレードのフィルターを利用すると、プレコーティングの欠点を避けることができます。 プレミアムグレードフィルターは、ある種の恒久的表面処理を行ったもので、この処理によって粒子をメディア表面で捕集し、基材への粉塵ロードを防止します。 最も一般的なタイプの表面処理には、直接塗布されたファインファイバー、メルトブローラミネーション、PTFE層などがあります。 メルトブローンコーティングのプレミアムフィルターは高効率ではあるものの、サブミクロン粒子がメルトブローン層の深部に捕集されることが多く、効果的なパルスクリーニングができません。 結果としてフィルター全体の寿命が短くなってしまいます。 PTFEコーティングフィルターも効率的で、ほとんどの状況で効果的なパルスクリーニングができますが、通常は、空気抵抗が高い状況や圧力損失が大きい状況で動作します(そしてより多くのエネルギーを消費します)。 また、他のプレミアムグレードのフィルターよりもはるかに高額になります。 ファインファイバーの表面層を直接塗布したフィルターは、優れた効率とパルスクリーニングを効果的に提供します。さらに、比較的低い圧力損失で動作し、一般的に非常に費用効果も高くなっています。図2を参照してください。

図2. Ultra-Web®クリーンメディア
Ultra-Web®表面捕集メディア

プレミアムグレードの中では、ほとんどの場合、ファインファイバーフィルターが最良のオプションとなります。 ファインファイバーを使用したプレミアムフィルターのメディアは、ファインファイバーの永続的な表面層を備えた基材(多くの場合、一般的なセルロースカートリッジメディアに類似)で構成されています。 通常、この層の厚さは1ミクロン未満のため、目詰まりやデプス捕集は問題になりません。 高品質のファインファイバーカートリッジのプレミアムファインファイバーは、通常直径0.3ミクロン以下のファインファイバーであり、フィルターメディアの表面に小さな細孔の恒久的なマトリックスを形成します。 表面層のファイバーはサイズが非常に微細なため、空気抵抗の著しい増加はなく、初期の圧力損失が低く抑えられます。

より高い初期効率に重点を置く場合は、ファインファイバーフィルターが優れたオプションとなります。 クリーンで新しいファインファイバーカートリッジの効率は、一般的なカートリッジよりもはるかに高くなります。一般的なファインファイバーカートリッジはサブミクロン粒子で少なくとも65%の効率がありますが、一般的なフィルターで30%の初期効率を達成するのは難しく、ファインファイバーフィルターの動作効率は急速に高まります。 ASHRAE 52.2のテストでは、1オンス(または28.35グラム)の粒子がファインファイバーカートリッジに供給された後、そのサブミクロンの効率が簡単に90%を超える可能性があることが示されています。

フィルターカートリッジの寿命を延ばしたいユーザーは、プレミアムグレードのファインファイバーフィルターを使用することでメリットが得られます。 稼働時、粉塵はファインファイバーメディアの表面に捕集されます。 メディアがパルスクリーニングされると、ダストケーキのほとんどがメディアから払い落とされ、フィルターから除去されます。 ファインファイバー層は無傷のままであり、デプス捕集や目詰まりから基材を継続的に保護します。 デプス捕集はもはや重要ではないため、ファインファイバーカートリッジは、他のどのメディアオプションよりも低い動作圧力損失まで継続的にクリーニングし、大幅に長い寿命を生み出します。図3を参照してください。

図3

最後に、プレミアムファインファイバーメディアの強化されたパルスクリーニング性能により、一般的なメディアフィルターに関連するデプス捕集を受けないため、クリーニングの必要性が低減され、フィルター全体の気流(圧力損失)に対する平均抵抗が低くなります。 より低いパルスクリーニング需要は圧縮空気を節約し、プレミアムグレードのファインファイバーフィルターはより低い平均動作圧力損失で動作するため、プレミアムファインファイバーメディアカートリッジはファン動作中の馬力を節約します。 馬力節約と圧縮空気節約が合わさって、耐用年数全体を通して大幅なエネルギー節約になります。

プレミアムグレードのファインファイバーカートリッジによって提供される長寿命、改善された効率、エネルギー節約を考慮すると、プレコーティングよりも費用効果の高いソリューションであることがわかります。

用途に最適なソリューションを見つけられるようお手伝いします。

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