高出力密度と耐久性の向上により総所有コストを削減

水素燃料電池技術の開発は、クリーンで脱炭素化されたエネルギー社会の実現に向けた大きな一歩となりました。燃料電池が有力な選択肢であり続けるには、高出力密度と長期的な耐久性を両立させ、総所有コストを削減することが不可欠です。

ドナルドソンは15年以上にわたり、業界をリードするグローバル企業と協力し、高度に設計された延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)強化プロトン交換膜の商業化に取り組んできました。その成果は、薄型で効率性と耐久性に優れ、低い抵抗で最適な電流密度を実現するメンブレンとして結実しています。

当社は、厚さ、弾性率、極限強度、異方性といったePTFEの特性が、燃料電池スタックの長期耐久性に与える影響を熟知しています。この専門知識を生かし、非強化PEM燃料電池膜に代わる改良型の選択肢として、燃料電池スタック向けのePTFE強化複合PEMに最適化されたePTFE製品を提供しています。

燃料電池の仕組み

図1:汎用燃料電池 図1:汎用燃料電池

図1の図解は、一般的な燃料電池の構造を示しています。水素と空気はそれぞれ陽極と陰極に供給され、触媒層(電極)に拡散し、そこで電気化学反応が起こって電流が生成されます。反応物を均一に分配するため、通常、電極と流路の間には多孔質層(ガス拡散層)が配置されます。

上記の式は、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)の基本的な電気化学反応を示しています。燃料電池の動作中、陽極は燃料(水素など)を電子とプロトンに変換します。生成されたプロトンは膜中のイオノマー層を通過し、電子は外部回路を通って流れます。最終的に、プロトン、電子、酸素が陰極で反応し、水が生成されます。

触媒コーティング膜(CCM)

図2:CCMの概略図 図2:CCMの概略図

触媒コーティング膜(CCM)は、PEMFCの主要な構成要素です。CCMは、陽極、陰極、および電解質として機能するポリマー電解質膜のイオノマー層(例:パーフルオロスルホン酸)から構成されています。陽極と陰極は適切な触媒層で構成され、層状でPEMに接合されています。燃料電池の動作時の電気化学反応は、CCM内で行われます。

 

ポリマー電解質膜(PEM)

図3:PEMの概略図 図3:PEMの概略図

燃料電池におけるPEMの主な役割は、陽極と陰極のガスの分離、プロトンの輸送、電子の絶縁、陽極および陰極層への機械的強度の提供です。

 

PEM補強が重要な理由

燃料電池の動作中、PEMは高い相対湿度下で水分を吸収して膨張し、低い相対湿度下で水分を失って収縮します。この膨張と収縮の繰り返しにより、PEMに大きな機械的応力が生じ、最終的には機械的な破損につながります。

図4:MEA用ePTFE基材 図4:MEA用ePTFE基材

ePTFE補強により、PEMの耐久性と寿命を大幅に向上させることができます。膨張と収縮のサイクルにおいて、ePTFEの高い機械的強度と化学的安定性により、発生する膨張および収縮の力に対抗する「保持力」が生まれます。そのため、ePTFE強化膜は緻密膜(非強化)と比べて機械的耐久性が大幅に向上します。

実際、米国エネルギー省(DOE)が定める耐久目標(軽量車両で8,000時間、重量車両で30,000時間)は、ePTFE補強されたエンジニアードPEM膜なしでは達成できません。

加えて、薄型で高効率なePTFEメンブレンは、この不可欠な補強を担いつつ高い電流密度の維持にも寄与しています。これによりスタックのセル数を削減できるため、総重量の低減が可能になります。これらは強度、性能、発電能力を損なうことなく実現できます。

用途に応じたePTFE構造の選定が重要

多くのプロトン交換膜は、用途ごとに精密に設計される必要があります。たとえば、定置型燃料電池、軽量車両、重量車両では、要件が大きく異なります。 そのため、PEM膜の補強材として多様なePTFE構造を選択できることで、OEMは必要なePTFE補強と化学特性の両方を指定し、燃料電池の性能を最適化することが可能になります。

多様なOEMニーズに対応するため、ドナルドソンは用途ごとにさまざまな世代のメンブレンを開発してきました。以下に示すように、当社の製品ラインアップは、それぞれの用途に応じた設計ソリューションを提供しています。

最適なメンブレン選定が性能を左右します

ドナルドソン独自のTetratex™ ePTFEメンブレンの広範なポートフォリオは、数十年にわたる研究開発を経て進化してきました。業界の厳しい性能要件を満たしつつ、スタックの小型化と総所有コスト低減というOEMの期待に応え続けています。Tetratexはドナルドソンが独占的に製造、販売を行っています。高品質な製造とカスタマーサービスを重視し、安定した供給と迅速な納品を実現しています。

ドナルドソンは、さまざまな仕様や用途に対応する複数のePTFE水素燃料電池メンブレンテクノロジーの選択肢を提供することにより、OEMやティア1/ティア2サプライヤーに以下を提供しています。

  • スタックの機械的耐久性を維持しつつ、高電流密度化の要件に対応する薄型メンブレン
  • スタックの小型化と軽量化
  • 優れた機械的耐久性と高い強度による長寿命化
  • 安定した信頼性の高いパフォーマンス
  • コーティングとは別にePTFEメンブレンを指定できることにより、あらかじめ設定された(最適化されていない)ソリューションではなく、最適なメンブレン/コーティングソリューションの選択肢をOEMに提供