金属加工会社は、金属加工液へのばく露による悪影響の削減、屋内空気品質基準への準拠、メンテナンスコストの削減、整備コストの削減、部品品質の向上を目的として、工作機械にミストコレクターを使用し、清浄な空気を供給しています。ミスト捕集の利点はたくさんありますが、ミスト捕集装置の選択は簡単ではありません。ここでは、ミスト液滴を空気から分離するための基本的な設計原理に基づく、さまざまな種類のミストコレクターを紹介します。トピックは次のとおりです。
- ミストとスモークの定義
- 可視的な効率性
- 性能特性
- さまざまなミストコレクターの操作の基礎
- フィルターの最適化
- 集塵機効率の測定
ミストとスモーク
ミストは、一般に直径20ミクロン以下の液滴として定義できます。この記事では、主に油性および水溶性の潤滑剤とクーラントを使用する場合に重点を置いています。これらの潤滑剤とクーラントは、金属切削、金属成形、研削、部品洗浄など、多くの用途で使用されています。たとえば、水溶性の金属加工液を使用するミリング操作とターニング操作は、通常、2~20ミクロンのミスト液滴を生成します。同じ操作で油性の液体を使用した場合、通常、0.5~10ミクロンのミスト液滴が生成されます。
スモークは、通常直径0.07~1ミクロンの微細な物質であり、不完全燃焼や過飽和スチームの凝縮によって生じる固体または液体エアロゾル¹です。熱生成ミストまたは油煙と呼ばれることもあります。スモークが発生する一般的な用途には、冷間圧造、ストレートオイルを使用した硬質金属加工、大型発電機での潤滑油貯蔵庫の使用、熱処理があります。
可視的な効率性
ミストが見えないということは存在しないのだと考えているメーカーもあります。このような観点は、サブミクロンミストが製造環境に与えるダメージを認識していないことになります。作業員のばく露、メンテナンス、整備、屋内空気品質基準または排出基準の遵守に関連するダメージです。実際、人間の目では40ミクロン未満の液滴を見ることはできませんが、金属加工作業の多くにおいて微細なミスト液滴が存在するという実質的な証拠があります。目には見えないかもしれませんが、においはするのです。
性能特性
ミストコレクターの主な機能は、フィルトレーションする空気からミストとスモークの液滴を除去することです。このタスクを実行するため、集塵機は小さな液滴を融合させて大きな液滴にし、フィルターが詰まる前に、捕集したクーラントをフィルターから排出する必要があります。
ミストコレクターの性能には、3つの測定可能な特性が見られます。
- 圧力損失:集塵機の動作圧力損失は、エネルギーコスト式の一部として重要です。圧力損失が大きいほど、必要な風量を集塵機に引き込むために必要となるエネルギーが大きくなります。
- 効率:空気からミストやスモークの液滴を除去する集塵機の効率性も重要です。これによって、集塵機から通常屋内環境に排出される空気の清浄度が決まるためです。ミストコレクターを設置する理由は、空気をきれいにするためです。効率性は、集塵機からの排出時に空気がどの程度清浄になっているかを表す、主要な基準なのです。
- 流量:流量によって清浄にできる空気量が決定されるため、集塵機の流量は重要です。流量が低すぎると、集塵機へのミストやスモークを含む空気の吸引量も少なくなり、捕集するはずだったシステムで捕集できなくなります。流量が多すぎると、過剰な空気が集塵機に吸引されるため、エネルギーが無駄になります。均一な液滴捕集効率の維持には、一定の風量量が望ましいのです。
集塵機の基本設計に加えて、ミストコレクターの性能に影響を与えるミストの特性がいくつか存在します。
- ミスト濃度 - 空気に含まれるミストの量は、用途ごとに大きく異なります。現場試験で測定されたミスト濃度は、3mg/m³という非常に低い値から37mg/m³という高い値まで、さまざまです。実際の用途では、ミスト濃度の範囲がさらに大きくなると予想されます。空中浮遊の金属加工液のOSHA制限は、鉱油の5mg/m³(8時間ばく露)から他のクーラントの15mg/m³(8時間ばく露)までさまざまです。NIOSH推奨制限は0.4mg/m³と、さらに低くなります²。一般的なオフィス環境では、粒子の濃度は0.02~0.03mg/m³の範囲内にある傾向があり、金属加工作業環境近くのミスト濃度よりも大幅に低くなります。
図1 - 金属加工作業で生成される仮定的なミストとスモークの液滴サイズの分布。
- ミスト温度 - 高温ミストが冷却すると凝縮した水分が発生し、液滴のサイズや捕集方法に影響を与える可能性があります。水性クーラントの場合、温度が高かったり湿度が低かったりすると水が蒸発し、液滴のサイズが小さくなります。フィルターメディア動作温度の制限値も、ミストやスモークの捕集技術の選定時に考慮すべき重要項目です。
- ミストの種類 - ミスト液滴の種類が異なると、表面張力や粘性も異なり、ミストを融合させたり排出したりするミストコレクターの能力に影響を与えます。
- ミストのサイズ分布 - 一般的に、大きなサイズの液滴を捕集する方が容易ですが、大きな液滴はミストに含まれる液体(最終的には収集機から排出される液体)の全体的な質量に大きく影響します。図1は仮定的なミストとスモークの液滴サイズの分布を示しています。
- 含有物 - ミストが清浄であれば、乾燥粒子は含まれていないため、凝縮した水分による液体の排出に関してのみ考慮すればいいことになります。汚染ミストには乾燥粒子(削りくず)も含まれるため、これも空気から分離する必要があります。
さまざまなミストコレクターの操作の基礎
ミストの液滴を捕集する方法はいくつかあります。
電気集塵
電気集塵は、ミストを含む空気をイオン化装置に通し、液滴に正または負の電荷を加えるという方法です。帯電した液滴は交流高電圧と接地プレートを利用した捕集セルで捕集され、プレートに排出されます。液滴はプレート上で融合し、集塵機から排出されます。電気集塵機にはいくつかの利点があります。フィルターが付いていないため交換の手間がかからないこと、エネルギー消費が比較的少ないこと、新しい、もしくは完全に清浄な状態においては、捕集効率が高いことなどです。ただし、メンテナンスが非常に困難で頻繁に行う必要があるため、採用するメーカーは減っています。電気集塵機内の部品は、液滴の帯電や捕集効率を維持するために徹底して清潔に保つ必要があります。定期的なメンテナンスを実施しても、さらに問題が発生する場合があります。捕集セル内の帯電プレートに損傷があると、アークが発生する可能性があります。また、金属粉塵、チップ、削りくずがミスト液滴と一緒に捕集される用途では、電気集塵機内にアークが発生する場合があります。さらに、電気集塵機はオゾンを生成します。オゾンは屋内の空気汚染物質であり、刺激性があることで知られています。
慣性分離
主として慣性分離に依存する集塵機が、エアフローによって移送される液滴を分離する方法は次のとおりです。エアフローが表面の周りで方向を変えても、液滴はその慣性により直進運動を続けて表面に衝突し、最終的に他の液滴と融合して排出されます。慣性分離には色々な種類がありますが、すべてに共通する点がいくつかあります。まず、慣性集塵機は、バリアフィルトレーション機構なしでも機能します。通常、交換が必要な一次フィルターを使用しません。ただし、部品の汚れを清掃するには、かなり規則的なメンテナンスが必要です。また、慣性集塵機は、液滴がより大きい場合に効果的に機能します。液滴の捕集は液滴に依存するものであり、エアフローに依存するものではないためです。液滴が大きいほど質量が大きくなり、運動量が増え、捕集面に衝突する傾向が高まります。慣性集塵機は、直径1~2ミクロン未満のミストに関しては非効率的な傾向があります。最後に、回転を動力源とした慣性集塵機の場合、固形粒子が回転部品に集まって詰まる可能性があります。これにより均衡が失われ、工作機械に振動が伝わり、加工部品の公差に悪影響を与えます。
フィルターメディア
繊維フィルターメディアを使用する集塵機は、4種類のフィルトレーション機構で空気からミストとスモークの液滴を除去しています(図2を参照)。
ふるい分けは、10ミクロンを超える大きな液滴を捕集する、主要なフィルトレーション機構です。ふるい分けとは、2本以上の繊維の間を通過できない、粒度の大きい液滴を捕集することです。飛んでいる昆虫が網戸を通過できないのと同じです。液滴が繊維に接触すると、表面に付着し、他の液滴と融合して集塵機から排出されます。
慣性衝突は、主にミクロンサイズ以上の液滴を捕集するフィルトレーション機構です。慣性衝突はエアフローがメディアの繊維によって方向を変えても、液滴はその質量によって直進を継続することにより発生します。
捕捉とは主に0.1~1ミクロンのサイズの液滴を捕集するフィルトレーション機構です。捕捉(インターセプション)は、液滴が空気とともに流れているものの、繊維に近づき、付着することを指します。
拡散は主としてサイズが0.1ミクロン未満の超微細な液滴を捕集するフィルトレーション機構です。液滴は微小なため、エアフロー内の分子力の影響を受けます。このため、液滴はエアフローと同じ方向に移動しつつも、独自の運動を行います。
図2 - フィルター機構
液滴がフィルターメディアの繊維に付着すると、繊維上の他の液滴と融合します。融合した液滴が十分大きくなると、重力により繊維に沿って落下し、そこで排出されます。ミストフィルトレーションの大きなトレードオフの1つは、液滴を排出する必要性と高効率の必要性のバランスです。使用する繊維が細いほど、フィルトレーション効率が高くなります。しかし、ファインファイバーにはメディアをまとめるための樹脂が必要で、樹脂は融合した液体が効果的に排出される妨げとなります(図3を参照)。ファインファイバーで作られたフィルターメディアは、捕集した液体によって詰まりやすい傾向があります。事前分離なしでHEPAフィルターを使用するようなものです(図4)。フィルターメディアが太い繊維でできていると、排出特性は大幅に改善されますが、ミストの液滴(特に微小なもの)を捕捉するメディアの能力は大幅に損なわれます。
図3 - ポリエステル/ガラスフィルターメディアのSEM画像(500倍)。繊維間の樹脂の「ウェビング」を示しています。
繊維性メディア集塵機の中には、バグタイプフィルターにロフテッドメディアを使用しているものもあります。これらのフィルターは樹脂を多く含んでいないので、効果的に排出でき、効率も非常に高くなりますが、ただし、構造はあまり安定していません。時間が経過するにつれ、メディア内の繊維がつぶれて圧力損失が増加し、エアフローが減少し、フィルトレーション効率が低下します。
フィルターの最適化
高効率性と効果的な排出の双方を実現する方法として、多層の使用があります。多くのミストコレクターには、一般的に太い繊維、メッシュ、スクリーンで構成されたプレフィルター層があり、大きな液滴を捕集して容易に排出できます。二次または一次層は、残りのほとんどの液滴を効率の高いメディアで捕集しますが、良好な排出特性も維持しています。ファイナルフィルターはHEPA(0.3ミクロン粒子に対して99.97%の効率)またはDOP(0.3ミクロン粒子に対して95%の効率)フィルターが定格になっています。これらのフィルターは効率が高く、フィルターに到達する液滴の大部分を除去します。ただし排出効率は低く、設計のよくない集塵機では目詰まりする傾向があります。適切な設計の集塵機は、プレフィルターで大きな液滴の大きな塊を捕らえ、効果的に排出します。次に、一次フィルターが残りのほとんどの液滴を捕集しますが、大部分はすでにプレフィルターが捕集しているため、捕集は少なくなります。ファイナルフィルターにかかる液滴捕集は非常に小さいものの、高い効率性を誇ります。これらの層のいずれかがうまく機能しないと、集塵機全体が円滑に作動しません。
高い効率性と排出を実現する一貫した方法は、ミスト捕集のフィルトレーションの問題に対処する、特別設計のメディア技術を使用することです。
ドナルドソンSynteq XP™メディアは大小の繊維を組み合わせ、独自開発の樹脂フリー結合システムを使用しています。このメディアの設計により、一次フィルターは最大の利点を発揮できます。Synteq XPメディアは、結合繊維の表面を周囲のマイクロガラス繊維に熱融着させるという独自開発の結合システムを使用して、優れた性能を提供します。このタイプの結合では、樹脂が細孔を塞がないため、細孔構造が可能となり、最適性能と長寿命を実現します。したがって、ファインファイバーでも、排出を妨げる樹脂システムを使用することなく効率を向上できます。太い繊維は、優れた結果を実現する明確な排出チャンネルを維持するとともに、構造全体のサポートを提供します。
集塵機効率の測定
メディアフィルターを使用するミスト捕集に関して、もう1つの興味深い点は、圧力損失特性が乾燥粒子の集塵機とは大きく異なることです。静止した(クリーニングしていない)集塵機内の乾燥粒子はフィルターに捕集され、圧力損失が大幅に増加し、集塵機の稼働時間が長くなればなるほど効率が向上します。基本的に、新しい乾燥粒子は、以前捕集された乾燥粒子の塊を通過する必要があります。捕集された粉塵は、集塵機の粒子捕集効率を高めます。
ミストフィルトレーションでは、メディアが液体で飽和するので、圧力損失は適度に上昇します。ただし、集塵機が稼働し続けると、通常効率は若干低下します。効率低下の背景には、ミストフィルターの繊維性メディアによる細孔構造が存在します。液体が捕集され融合すると、細孔が液体で満たされ、目詰まりが発生します。フィルタリングは残りの大きな細孔に委ねられます。これによって、次の2つが発生します。
- 残りの細孔を通過する空気速度の増加と、それに伴う圧力損失の増加
- 残りの大きな細孔を通過する空気速度の増加。サブミクロンの液滴捕集の効率は減少するため、フィルター効率は明らかに低下する
ミストコレクターを購入されるお客様にとって、これは何を意味するでしょうか。記載されている集塵機の効率が新しいフィルターを使用した場合の値である場合、実際の用途での現実的な効率は、記載の値ほど高くならないということです。一定期間にわたってミストを使用した場合の測定値こそ、信頼できる唯一の値です。
結論
ミストコレクター技術の選択は容易ではありません。ただし、基本的なミスト捕集とスモーク捕集の技術の違いおよびトレードオフを理解し、作業現場の特性と目標に合致させることで、優れたソリューションを見つけることが可能です。
1 Aerosol Measurement, 2nd edition, Baron & Willeke, 2001.
2 Metal Working Fluids