水はディーゼルエンジンにとって単なる厄介者ではなく、燃料システム全体を損傷させ得る破壊的な存在です。ディーゼルには常に一定量の水が含まれているものですが、目標は深刻な問題を回避できるようにその量を少なく保つことです。
水が燃料に混入する仕組み、水による損傷、最適な管理方法を理解することは、機器と運用を守る上で重要です。
ディーゼル燃料中の水が問題となる理由
最新のディーゼルエンジンは遊離水を一切許容しません。水がシステムに与える有害な影響は次のとおりです。
直接的な損傷
水は以下の原因により、燃料タンクとエンジン部品の両方を破壊する可能性があります。
- 錆:他の硬質粒子と同様に、鉄や鋼の表面は水と接触すると酸化し、錆は部品の摩耗を引き起こします。
- 腐食:腐食は、インジェクターの問題の最も一般的な原因の1つです。水は燃料中の酸と結合することによって、鉄類と非鉄金属の両方を腐食させます。摩耗によって腐食しやすい新しい金属表面が露出し腐食しやすくなると、状態はさらに悪化します。
- 摩耗:水はディーゼルよりも粘度が低いため、可動部品が対向する表面間の潤滑「クッション」が少なくなり、その結果、摩耗が進んでしまいます。
- エッチング:エッチングは、金属表面を「侵食する」硫化水素と硫酸を生成する水による燃料の劣化によって引き起こされます。
- ピッティングとキャビテーション:ピッティングは、遊離水が高温の金属表面で瞬間的に蒸発することで発生します。キャビテーションは、急激な高圧にさらされたときに、蒸気の泡が急激に凝結(破裂)して液体に戻ることで発生します。これらの水滴は、小さな面積に大きな力で衝撃を与え、表面の疲労や浸食を引き起こします。
- スポーリング:水素脆化と圧力が原因で発生します。金属表面の微細な亀裂に押し込まれた水が、極圧下で分解し、水素を放出するミクロ爆発によって亀裂を拡大して、摩耗粒子を生成します。
- 氷の結晶:燃料中の遊離水は凍結すると氷結晶となり、硬質粒子と同様に燃料システムの摩耗を引き起こします。さらに、この氷結晶が大量に存在すると、燃料フィルターの目詰まりを招きます。
間接的な損傷
水が引き起こすのは物理的な損傷だけではありません。化学的な劣化も促進します。
- 柔らかい固体:水には極性があります。添加剤に含まれる特定の化学物質にも極性があります。炭化水素は無極性です。つまり、水と極性化学物質は互いに引き付けられることになります。遊離水があると、化学分子が添加剤の炭化水素鎖から解離し、水分子と結合して新しい物質を形成することがあります。新しい物質は、燃料から沈殿する柔らかい固体であり、フィルターをすぐに詰まらせたり、エンジン堆積物を生成したりする可能性があります。詳細については、添加剤の安定性を参照してください。
- 微生物の増殖:ほとんどの生物と同様に、細菌と菌類が生存するためには食物と水の両方が必要になります。遊離水が存在すると、微生物が増殖し、燃料を汚す粘液や、タンクや燃料システムを腐食させる酸が発生する可能性があります。
- 燃料の酸化:遊離水は酸化プロセスを加速し、一般に燃料分解生成物として知られている酸、粘材、沈殿物の形成を促進します。
水がディーゼルに混入する仕組み
水による汚染は燃料取り扱いプロセスの多くで発生する可能性があります。
- 燃料供給時 - 燃料には工程で水がすでに混入している可能性があります。
- 遊離水の離脱 - 燃料に水分が飽和点を超えて含まれている状態です。
- 結露 - 温度変化によってタンク内に水分が発生します。
- 漏れ - 雨水、高圧洗浄水、地下水がタンクに浸入することがあります。
- 大気からの吸収 - 湿度の高い空気からディーゼルに水分が移ります。
- 人為的なミス - ベント、蓋、ポートの密閉が不十分だと水が浸入します。
ディーゼル中の水の形態
ディーゼル中の水は3つの形態で存在します。
- 溶存水 - 飽和点を下回っている場合は目に見えず、通常は無害です。
- 遊離水 - 燃料から分離して底に沈殿する水滴です。
- 乳化水 - 燃料内に均一に混じり、浮遊している微細な液滴です。
暖かい燃料は冷たい燃料よりも多くの水を保持できます。燃料の水分含有量が飽和点を超えると問題が発生します。夜間に燃料が冷たくなると、同じ燃料でも温かいときよりも保持できる水分が減り、遊離水の析出が毎日発生する可能性があります。
過剰とされる水の量
水がまったく含まれないのが理想ですが、現実的ではありません。重要なのは水分量を飽和点より低く保って、遊離水への分離を防ぐことです。
- 飽和レベルは50~1,800 ppmの範囲で、温度やバイオディーゼルの含有量によって異なります。
- バイオディーゼルは石油ディーゼルより多くの水を保持しますが、両者を混合しても単純な平均値にはなりません。また、混合の過程で遊離水が発生する可能性があります。
ディーゼル中の水を測定する方法
いくつかの方法が存在し、それぞれに長所と短所があります。
- タンクディップ試験 - スティックに水検出ペーストを塗り、底部に水がないかを確認します。簡単で速い方法ですが、遊離水にのみ有効です。
- インラインセンサー - リアルタイムの溶存水分量のデータを相対湿度としてパーセンテージで表します。
- カールフィッシャー滴定法 - 高精度のラボ試験で、わずか約50 ppmの水まで検出します。
水の汚染を防ぐ方法
水による損傷を未然に防ぐには、次のような対策があります。
- 燃料供給を管理する:
- できるだけ配送の最初の順番で燃料を供給してもらい、タンク底に沈殿した水や汚れを受け取らないようにします。
- バルクタンクの入口には水を遮断するフィルターを設置します。
- 環境から保護する:
- アクセスカバーをしっかり閉じて、潮解性ブリーザーを設置します。
- 温度が変化しないようにして、タンクの結露を最小限に抑えます。
- 雨水が浸入する可能性があるため、地面の高さに充填口を設けないようにします。
- 保管状態を管理する:
- 燃料は定期的に入れ替えます。
- 空気(および水分)へのばく露を減らすため、タンクは常に満タンにしておきます。
- 水分量をモニタリングし、遊離水を定期的に除去します。
水の除去の問題点
現在の超低硫黄ディーゼル(ULSD)燃料では、水の除去がより難しくなっています。理由は次のとおりです。
- ULSDには界面活性剤添加剤が含まれており、合体フィルターの機能を妨げます。
- これらの界面活性剤により、従来の水分離器は高流量では効果が大きく低下します。
- 多くの場合、水を遮断するメディアを使用して、供給される燃料に水が含まれないようにする必要があります。
- タンクから遊離水を排出することは、大量の遊離水を排出する場合の最も費用対効果の高い方法です。
結論
ディーゼル燃料に水が含まれることは避けられませんが、損傷は避けることができます。適切に試験し、タンク設計を工夫し、フィルトレーションと貯蔵の戦略を適切に組み合わせることで、エンジンを水による故障から守ることができます。
燃料中の水の事前予防的な管理に投資することで、高額な修理、予期しないダウンタイム、長期的な性能の問題を回避できます。